佛教大学通信課程「印度哲学概論」第1投題「ウッダーラカ・アールニとヤージュニャ・ヴァルキヤのAtman説について」。
A判定をいただいたレポートです。テキストがかなり難解なので、参考にしていただければ幸いです。
ウッダーラカ・アールニとヤージュニャ・ヴァルキヤのAtman説について
このレポートを作成するにあたって、金倉圓照(1974)『インド哲学史』の第1章~第4章を特に参照した。
(1)Atmanについて
古代インド哲学において、ヴェーダ(アリヤン人種がインドに移住して最初に産出した文学で、もとは「知識」という意味であるが、とりわけ神聖な宗教上の知識をあらわし、さらに転じてこのような知識の源泉として一定の聖典を表すもの)の終に位する秘教密義の聖典ウパニシャッドでは、その主題として宇宙の本体に関する問題の討議が行われてきた。ここで提示される宇宙の統一原理はブラフマン(梵)と名づけられる。このブラフマンは神秘的な威力を意味し、もともとはマントラ(祈り)の知識を有する者であるところのバラモンに内在し、諸神万物を背後から動かす力と考えられた。これは人間の幸不幸は神々に支配されるのではなく、祭式の実行にかかっていると考えられるようになり、祭式を正しく実行することによって宇宙的現象を支配することができるので祭式は万能、それを司るバラモンは神に等しい至上の存在とされたことによる。また、ヴェーダの説明的...