1.問題の所在
Aは財物奪取のため暴行によりXの反抗を抑圧し、BはAとの意思連絡の下でXから財物を奪取しているため、強盗罪(236条)の共同正犯(60条)の成立が問題となる。ここで、強盗罪が成立するためには、①暴行又は脅迫を用いて、②他人の財物を、③強取することが必要となる。
ここで、「暴行」とは、社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のもの、「強取」とは、暴行・脅迫により、相手方の反抗を抑圧し、その意思によらずに財物を自己又は第三者の占有に移すことと解される。
本事例では、Aの暴行は、反抗を抑圧程度のものであり、強盗罪の暴行がなされたと言える。更に、Bは、反抗が抑圧されたXから時計や財布を奪取したため、強取がされたと言える。
このように、Xに対する強盗行為は、Aによる暴行とBによる強取によってなされ、Bによる強取は、Aとの間に意思連絡に下でされたことから、Aには強盗罪の共同正犯(60条)が成立する。
一方、Bによる強取行為は、A単独の暴行行為によってXの反抗が抑圧された後になされたものである。そのため、Bは暴行行為については責任を負わないとも思われ、承継的共同正犯の成立...