1.総論
被害者の承諾とは、法益の帰属者(法益の主体)である被害者が、自己の法益を放棄し、その侵害に承諾又は同意を与えることをいう。
被害者の承諾は、被害者に対する侵害行為の違法性を阻却する他、犯罪の成否・軽重に影響を与える。被害者の承諾が犯罪の成否に及ぼす効果の類型としては次の4通りが挙げられる。
(1)被害者の承諾により構成要件該当性が阻却されるもの
例えば、住居侵入罪(刑法130条前段)、秘密漏示罪(134条)、強制わいせつ罪(176条前段)、強姦罪(177条前段)、窃盗罪(235条)が該当する。
これらの行為が被害者の意思に反することによって初めて実行行為の実質を有することになるため、被害者の承諾により構成要件該当性が阻却される。
(2)被害者の承諾が構成要件要素であるもの
例えば、承諾殺人罪(202条)、同意堕胎罪(213条)が該当する。
これらは、被害者の承諾が構成要件要素とする犯罪類型である。被害者の承諾が違法性を軽減することとなり、被害者の承諾がない場合の罪(殺人罪、不同意堕胎罪等)より軽い法定刑が定められている。
(3)被害者の承諾が問題とならないもの
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