1.国際司法裁判所とは
国際司法裁判所(ICJ)とは、国際連盟時代に設立された常設国際司法裁判所(PCIJ)を引き継ぐものであり、国連の主要な司法機関(国連憲章92条)として、国連との組織的な結合が図られ、国際紛争を解決する司法裁判所としての役割を担っている。
ICJが行う主な任務は、国家間の紛争に司法的判断を下しその解決を目指す司法的機能と、国際組織が諮問する法律問題に対し意見を与える勧告的意見機能にある。
このようなICJの役割から、ICJと国内裁判所とでは、以下のような異同が生じる。
2,ICJと国内裁判所の異同
(1)当事者適格
ICJは、国家間の紛争に司法的判断を下すものであるから、国家のみが当事者となり得る(ICJ規定34条1項)。すなわち、国際機関や個人・私企業などは訴訟当事者になれない。
これに対して、国内裁判所では、幅広い紛争の解決を目的としているから、自然人・法人を問わず、広く訴訟当事者能力が認められている。また、国家賠償訴訟や行政訴訟でも見られるように、国家も訴訟当事者となり得る。民事訴訟の場合には、代表者の定めがある権利能力なき社団も訴訟の当事者になるこ...