<課題概要>
A宅が留守であることを知った甲は、A宅に忍び込み、現金や金属類などを盗むことに成功した。その後、とくに行く当てがなかった甲は、しばらく居座りまた後で金目の物を探しだそうと思うに至り、とりあえず天井裏に身を隠すこととした。甲が天井裏に移動してから約3時間後に帰宅したAは、天井裏で不審な物音がすることに気づき、警察に連絡した。駆けつけた警察官は、天井裏の甲に気づき、逮捕しようとしたところ、甲はその警察官に、逮捕を免れようとして暴行を加え、加療3週間を要する傷害を負わせた。
甲の罪責を論じなさい。
1.甲の罪責
甲は、A宅に忍び込み現金や金属類などの盗みを行った上、後で金目の物を探し出すために天井裏に身を隠した。しかしながら、その後に帰宅した家人に見つかり、家人の連絡により警察官が逮捕のために駆けつけたところ、甲は、警察官からの逮捕を免れるために警察官に暴行を加え、傷害を負わせている。
このような場合において、事後強盗罪(248条)が成立するか否かが問題となる。
事後強盗罪の構成要件要素は、窃盗が財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたこと、である。
まず、事後強盗罪は、窃盗犯人を主体とする身分犯であり、窃盗行為への着手がなければならない。本事例では、甲は、A宅から現金や貴金属などを盗んでいるため、窃盗行為の着手があり、窃盗の要件を満たす。
また、暴行・脅迫は、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものであることを要する。本事例では、警察官に3週間の傷害を負わせているので、暴行があったと言える。
次に、甲は窃盗行為を行った後、しばらくの間天井裏に身を隠し、警察官に対する暴行行為が行われるまで3時間以上の時間的な空白があ...