課題概要
所有権留保売買、他人の物の売買および二重売買の諸ケースにつき、生じえる危険負担(民法534条以下)の問題を論じなさい。
第1 総論(危険負担)
危険負担とは、双務契約成立後、一方の債務が債務者の責めに帰することができない事由によって履行不能となった場合、他方の債務も当然に消滅するか、という問題である。なお、契約成立前に不能となっていれば、原始的不能の問題であり、危険負担の問題ではない。
ここで、民法は、双務契約における当事者双方の債務は密接な関係をもつので、一方の債務が不能となったときには、他方の債務も消滅するとみる方が公平に適すると考え、消滅した債務の債務者が危険を負担する考え方である債務者主義を原則として採用する。
すなわち、民法は、当事者双方の責めに帰することのできない事由によって債務を履行できなくなったときは、債務者は反対給付を受ける権利を有しないという原則を定めている(民法536条1項)。
その一方で、民法は、債務者主義の例外の場合を定めており、特定物に関する物権の設定・移転を目的とする双務契約の場合には、消滅した債務の債権者が危険を負担するという債権者主義を採用する(民法534条1項)。
これが民法が規定する債権者主義と債務者主義の規定であるが、上記債権者主義をそのまま事例に当ては...