課題概要
契約締結上の過失、特にその諸類型を踏まえた要件と効果について論じなさい。
第1 総論
契約締結時の過失とは、契約の目的物が契約締結前に滅失していた場合など原始的全部不能であることによって契約が無効となった場合にも、当事者は、一種の債務不履行責任として、相手方に損害を被らせない信義則上の義務を負うことを認める理論をいう。
このような債務不履行責任と認めるのは、挙証責任などで被害者の保護として不十分であり、また、契約締結段階に入った当事者の関係は通常より緊密な関係にあるからである。
契約締結時の過失の理論が認められる根拠としては、その過失の類型によって異なる。そこで、それぞれの類型に応じた理論を説明するとともに、その要件と効果を説明する。
第2.諸類型
1.契約無効型
この類型の例としては、契約締結時に既に焼失していた別荘を売主が気付かず売ってしまった場合が挙げられる。
このように、契約の目的物が契約締結前に滅失していた場合には、当該目的物の引渡債務は、原始的に全部不能で無効であり、その結果、契約自体も無効となる。
しかし、この場合、民法709条に規定する不法行為責任では、消滅時効の時効期間が3年と短く(民法724条)、故意・過失の挙証責任等の面で被害...