1.総論
代理制度は、私的自治の拡張(任意代理)・制限された私的自治の補充(法定代理)として認められている。したがって、代理人が本人から与えられた代理権の範囲内で代理権を行使した場合、その代理人が行った意思表示は本人に対してその効力を生じるのが原則である(民法99条)。
そして、民法は、代理人が行った意思表示の効力が及ばない場合として、本人のためにすることを示さない意思表示(100条)、自己契約及び双方代理(108条)、権限外の行為の表見代理(110条)、無権代理(113条)といった規定を設けている。
本問では、代理人が本人の利益に反して自己または第三者の利益を図る目的で代理権を行使した場合を問題としている。このような代理権の行使は、本人のためにする意思表示であるといえるし、自己契約や双方代理でもない。また、代理権の行使ということは越権行為や無権代理でもなく代理権の範囲である。
よって、本問のような代理人の行為は、上述した代理人が行った意思表示の効力が及ばない場合の規定の何れにも該当しない。
そのため、客観的に代理権の範囲であれば、原則として代理権の効力は有効である。本人にもそのような...