抵当権の効力が抵当不動産の賃料に及ぶか
問題の所在
まず、賃料債権が物上代位 (372条・ 304条1項)の客体となるかが問題となる。この点、民法372条は、先取特権の物上代位に関する規定(民法304条)を準用しており、民法304条も「賃貸によって債務者が受けるべき金銭」に対する物上代位を規定していることから、条文の文言からすると、抵当権の効力は抵当不動産の賃料に及ぶと解するようにも思われる。
しかし、抵当権は、抵当権設定者の下に目的物の占有を残して、抵当権設定者による目的物の私用収益することを妨げない非占有担保物権である(民法369条)。そして、抵当不動産の賃料は抵当目的物たる抵当不動産の使用収益の対価としての側面を有するものである。よって、抵当権の目的物に対する使用収益権能が抵当権設定者に留保されている抵当権において,抵当権の効力は賃料に及ぶとすると、抵当権の非占有担保物権としての性質に反することになるのではないかという問題が生じる。
さらに、民法371条は、抵当権の効力は、原則として抵当不動産の果実に及ばない旨を規定している。この規定との関係からも、原則的に抵当権の効力は、...