1.総論
不法占拠者Cに対して明け渡しを求めるような妨害排除請求権は、本来、所有権のような物権に認められる物権的請求権である。よって、不動産である所有者Bは、不動産の所有権に基づき、不動産の明け渡しを内容とする妨害排除請求を行うことができるが、賃借人に過ぎないAは、原則として、自己の賃借権に基づき妨害排除請求権を行使することはできない。
すなわち、賃借権は、物権である所有権と異なり、債権に過ぎない。債権たる賃借権の効力は、原則として、債権者と債務者の間に及ぶものであって、それ以外の第三者には及ばないものである。よって、賃借権などの債権には、妨害排除請求が認められないとするのが原則である。
しかし、判例・学説は、このような場合においても、賃借人たるBに明け渡しを認める途を認めている。すなわち、①占有訴権に基づく明け渡し請求、②対抗要件を備えた賃借権に基づく明け渡し請求、③債権者代位権に基づく明け渡し請求である。
これらは、全て明け渡しを求める内容であるが、その法的構成がそれぞれ異なるため、次のような差異がある。
2.各法的構成について
占有訴権
賃借人であるAが不動産を占有してい...