法の発展において、福祉国家主義の特徴を近代市民法の特徴との対比の中で具体的に論じ、さらに現代の日本で福祉国家主義を象徴する法律を3つ挙げてそれぞれ論評せよ。
福祉国家主義の特徴と近代市民法の特徴は対峙するものではない。福祉国家主義とは、近代市民法を適用した資本主義社会におけるセーフティー・ネットであり、補助輪の外れた「新自由主義」の本質こそ、資本主義の原型であると言える。
教科書では、近代法とは近代市民社会=資本主義社会の法である、と定義されている。私的所有が認められ、契約による財貨の交換が認められ、交換当事者の独立自由な法的主体性が認められなければならない自己完結的な体系をなしている(私的自治の原則)。近代法の成立過程は、欧米の主要国だけをとってもきわめて多様であり、単純な図式に当てはめて説明できるものではないが、大まかな流れは次のような流れを汲んでいる。
ヨーロッパでは19世紀後半から20世紀初頭にかけて労働者たちが政治的自由を獲得するために闘争を行なうようになった。このような市民社会の大衆社会化に対応して、「所有権の絶対」や「契約の自由」などの市民法の基本原則が制限するかわりに、国民の政治的権利が承認され、市民法の成立が民主主義の確立に先行した。
西欧諸国がもはや植民地を維持し続けられないことが明白になるにつれて、労働者は小生産者の経...