次の二問についてすべて答えなさい。
一. 国司が受領とよばれるようになる前と後とについて両時代を比較してのべなさい。
二. 室町幕府の成立と、その統治のあり方、幕府の制度について概観しなさい。
一、国司が受領とよばれるようになる前と後とについて、両時期を比較してのべなさい。
国司が受領と称される前の国家体制は、律令国家であったと言える。七〇一年に制定された大宝律令を皮切りに、律令制は個人を徴税単位とする人別支配を基本原則としており、唐に倣った律令法典や官僚・地方制度などが導入された。中央政府から派遣された国司は、人民を一人ひとり把握する必要があったため、地方豪族ら出身の郡司を率いて、公民に班田を与え、戸籍を六年ごとに作成し、これに基づいて毎年計帳を作成した。百姓の浮浪・逃亡に備え、計帳には身体的な特徴も記載された。しかし、早くも八世紀後半頃より百姓の偽籍や浮浪・逃亡が見られはじめた。中央政府は律令制を維持しようとする試みが繰り返したが、逃亡したり負債のある貧困民と、その土地を吸収し、開墾を進めた富豪層との階層分離はますます加速していった。
国司が受領と呼ばれるようになる後の国家体制は、王朝国家であった。九世紀後期にもなると、律令国家体制が基調としていた人別支配は機能しなくなり、土地に対する課税・支配を基調とする王朝国家体制に移行されていった。律令制における租庸調は、個人に対...