医療をめぐる法律問題について。
近年、日本では医療現場での手術ミスなどが生じ、「医療不信」としてマスコミによって全国的に伝えられることが多くなった。そうした影響で、医師と患者の関係は変化し始め、医療における患者の主体的地位を尊重することで、適切な医療の実現を図る必要性が強調されるようになったのである。そうした流れの中で、現在の医療の基本的原則となったのがインフォームド・コンセントである。これによって、医師と患者の権利義務関係が生じ、最終的に患者の自己決定権が保障されているのである。
医師と患者の権利義務関係は、主に患者の権利に対して発生する医師の義務という形で表現される。しかし、この医者と患者の権利義務関係にはいくつかの問題が提起されている。
まず、患者には知る権利があるのに対し、医師には説明する義務がある。しかし、一人の医者に全ての選択肢の説明を求めるのは不可能であるといえる。なぜならば、専門分化した現代医療においては専門分野が異なれば常識が常識でなくなるし、現実としての説明の義務は医者の専門領域に特化した選択肢の説明という非常に狭い範囲に限られたものであり、全ての選択肢とはな...