胎児期・乳幼児期から老年期に至るまでのライフステージのどれかを選んで発達的な特徴をまとめ、その段階に起こりがちな危機を1つ挙げてその対応について考察しなさい。

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    「胎児期・乳幼児期から老年期に至るまでのライフステージのどれかを選んで発達的な特徴をまとめ、その段階に起こりがちな危機を1つ挙げてその対応について考察しなさい。」
     エリクソンの発達心理学では、人間は生まれてから死ぬまで生涯に渡って発達するとしている。ライフステージを8つの段階に分けてそれぞれの段階で獲得すべき課題を設定しており、肯定的側面と否定的側面を対にして設定している。ある部分で肯定的側面を獲得できなかった場合には、後で獲得しなおすことができるとしている。否定的な部分を抱えながらも成長していくことが重要である。
    子どもは乳幼児期から青年期にかけて、身体が大きくなり、様々なことができるようになる。だが、発達とは今までできていたことができなくなるといった、成人期から老年期にかけてみられる衰退や退化的な変化も含まれる。以上のことを踏まえ、以下に児童期を選択し発達の特徴をまとめ危機について述べ対応について考察する。
    児童期とは、一般的には6、7歳から12、13歳までの時期、つまり小学校入学から卒業にかけての時期のことをいう。人間が生活していくうえで規範となる道徳性を身につける重要な時期であり、7歳頃までの子どもは、親の判断を絶対的なものとしてとらえている。そのため、ものごとの善悪の基準にも親の判断をそのまま受け入れる傾向がある。9歳頃になると、親の考える道徳や規則だけではなく、人によって考え方が異なり、時と場合によっても変わる道徳があるという理解と考えが芽生えてくる。
    児童期の脳の容量は、幼児期の3倍に達する。これは、早期より脳を発達させる準備が整っていることになる。脳の発達に合わせ学校で過ごす時間も長くなり、一人前の人格をもった人間となるための基礎を学ぶ大切な時間になる。知能の面だけでなく、感性の豊かな人間となるような指導も望まれる。
    就学前の子どもたちは遊びや日常の具体的経験の中で知識を身につけていたのに対し、小学校は、予め計画された学習計画に沿って、科学的な概念や知識の習得が求められるようになる。小学校に入学するのに従って、子どもたちはいくつかの課題に直面する。そして、それを克服し小学校という新たな環境や文化へ適応することが求められる。しかし、新しい文化や環境への適応はすべての子どもたちにとって必ずしも楽な作業ではない。例えば授業中に教室の中を立ち歩く子どもや、教師の指示に従わない行動をとる子どもがいて、授業の進行が困難になる状況が小学1年生の早い時期から生じていることが指摘されている。このような現象は、小1プロブレム(小1問題)として問題視されている。これには、幼稚園、保育所の在園中より様々な不安や気がかりを抱えている保護者への支援や、保護者、幼稚園の教諭などと共に小学校を訪問し、子どもの学校への不安などを解消できれば、移行期をスムーズに乗り越えることができると考える。また、幼児期の環境は子どもの人格形成や心の安定に大きく影響することから、親の心の安定を図ることも大切であるといえる。
    児童期の認知・思考の発達の特徴として、一つ目に論理的思考のはじまりをあげる。外見的特徴や見かけに基づく施行ではなく、物事を論理的に考え、見かけを超えた実態を理解することが可能となり、「他者にはどう思われているか」や「他者はどのように考えているか」など他者の視点に立って物事を考える力なども発達する。二つ目は、自分の認知・思考についての理解である。自身の認知や思考に関する知識をもち、それらを意図的に調整し、コントロールする能力が発達する。この能力は、有効な学習の仕方を自身で計画し実行したり、自分の学習の程度を評価するといった主体的な学習活動を支える能力である。三つ目は自己理解の深まりと自己評価の変化である。児童期には、認知発達に伴い、他者の視点に立って自身を眺め、より客観的に自分を理解できるようになる。さらに、他者との比較や属する集団の基準に照らし合わせて自己を理解するようになる。また、自身の特徴を述べる際、身体的特徴よりも多く自身の行動や人格特性について述べるようになるのが特徴だ。
     児童期における社会・対人面の発達の特徴としては、対人関係の拡大・仲間関係の影響がある。児童期では対人関係が拡大し、一日の多くの時間をともに過ごす仲間との関係がより重要となる。仲間との関係や仲間集団内での関心やきまりなどを基準として自身の行動や態度を決めていくようになる。また、仲間との関わりを通して自己理解を深め、他者との関わり方や集団での振る舞い方を学んでいく。良好な仲間関係は子どもの生活をより豊かなものにするが、仲間との関係がストレスになり、深刻になると心理的問題を引き起こすこともある。他にも仲間への同調が、いじめなどの反社会的行動のきっかけになる場合もあり、児童期において仲間関係は良い意味でも悪い意味でも非常に重要であるといえる。
     エリクソンは、人格発達の過程の中で児童期に直面する課題として、勤勉性対劣等感という心理・社会的危機の克服をあげている。子どもたちは生活の中心を学校へと移し、主要な人間関係も家族から担任教師や同級生、上級生、下級生といった仲間集団などの学校における人間関係へと変わっていく。幼児期までの家族を中心とした生活では、両親が愛情を注いで育ててくれていただろう。だが、学校生活では教科を中心に、できるかできないか、一生懸命やっているかどうかを観点から評価される。そして、子どもたちは仲間と比較しながら自分の能力や適性を考えるようになっていく。したがって、自分が仲間よりも優れている時もあれば、劣っている時もある。大人、特に親は子供が他の子どもよりも良い成績や評価をもらっているかに目がいきがちである。結果だけを問題にすると、子どもは劣等感に悩まされることになる。結果だけに注目するのではなく、どのような過程を通ってきたのかということや、努力をしたという事実を認め、評価することが重要である。
    以上、児童期についての発達の特徴と起こりがちな危機について述べてきた。児童期には小学校という新たな環境の中で、学級集団の中での振る舞い方や、対人関係の拡大、科学的な概念や知識の習得をし、それに伴い自己理解が深まる非常に大切な時期である。しかし、劣等感といった自己に対する否定的な感情が生じやすいのが、この時期の特徴である。教師が教室であまり比較するのは子どもの自尊心を下げ、劣等感を生み出しやすい土壌を作ってしまうことになる。この危機を乗り越えると、親だけでなく他の人々とも上手くやっていけるという自信を獲得できる。自尊意識が高まり、自分が社会にとって必要な存在であるという実感をつかんでいく。児童期も後半になると、自分の能力を試しながら徐々に自分の将来を考えたり、職業の適性を考えるようになる。そのためにも親や教師は一人ひとりの子どもの特徴を把握し、子どもを認め、自信をもたせながら夢を実現できるように援助することが大切であると考える。
    <参考文献>
    1.本郷一夫編著『シードブック 保育の心理学Ⅰ・Ⅱ』建帛社2011年
    2.後藤宗理著『子どもに学ぶ発達心理学』
    樹村房2009年
    3.依田新/東洋『児童心理学』新曜社1992年
    4.無藤陸/岡本祐子/大坪治彦編『よくわかる発達心理学 第2版』ミネルヴァ書房 2009年
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