W0354 地域福祉論2 ①現代日本の地域福祉における社会福祉協議会の役割と課題について説明しなさい。5月
地域生活問題の解決の手段の一つとしてあげられるのが、地域組織化活動(コミュニティ・オーガニゼーション)と呼ばれるものである。これは、①特定の地域の中で人々が生活する上で抱えている問題や福祉ニーズを発見し、②地域住民一人一人の共通問題をしてとらえ、③問題解決に向けて共同して計画を立てて役割を分担し、地域住民全体で社会福祉活動を展開していこうとするものである。また、個の地域組織化活動は、ノーマライゼーションや地域福祉といった福祉の新しい考え方やあり方を具現化し、発展させていく役割を担っているといえる。
このような地域組織活動を行う中心的な役割を担っているのが、社会福祉協議会である。社会福祉協議会は、社会福祉法第107条及び、第108条に基づく民間団体である。当初は、都道府県レベルで設置されていたが、現在では、市町村レベルや地区レベルまで広がり、全国社会福祉協議会を中央として、都道府県には都道府県社会福祉協議会、市区町村社会福祉協議会が設置されている。
社会福祉協議会の活動は、社会福祉活動への住民参加を推進する事業である。住民参加による社会福祉を目的とする事業の実施が中心となっている。このために住民に身近で地域福祉の直接の担い手である市区町村社会福祉協議会及び、地域の実情により組織されている地区社会福祉協議会が中心的な役割を果たしている。そのすべてが、社会福祉法人であり、「地域福祉の推進」を目的としている。また、民間組織としての「自主性」と地域住民や社会福祉関権者に支えられた「公共性」という側面を併せ持っていることが特徴となっている。
社会福祉協議会の活動として、①住民・援助の対象者、社会福祉関係者の組織化・支援②福祉問題の把握、地域福祉活動の策定、改善運動の実施③福祉サービスなどの企画、実施④総合的な相談援助活動、情報提供活動⑤福祉教育、啓発活動、社会福祉の人材養成⑥在宅サービスの推進⑦地域福祉財源の確保、女性の実施⑧ボランティア活動の振興である。
社会福祉事業法の抜本的な改正により「社会福祉法」が誕生した。この法律は、「地域福祉の推進」を基軸とする今後の社会福祉の道筋を示しており、その一翼を担う社会福祉協議会への期待は大きい。この法律によれば地域住民や福祉サービス提供者が地域社会の一員として参加が可能になるように、相互の協力を求めている。また、新たに創設された「地域福祉権利擁護事業」を含め、総合相談機能を強化するとともに、地域住民の意識向上を目指し、啓発活動を行うこと、さらには経営基盤の自主的な強化と事業経営の透明化を求めている。地域福祉の一翼を担う社会福祉協議会の組織は、こうした動向を踏まえて、再構築する期待されている。
コミュニティワークの実践主体として、地域の福祉課題の解決を図る側面と、福祉関連事業の実施主体として、サービスを供給する側面の両立を図る課題を持ち続けている。 ②地域福祉の推進方法について、関連諸領域との連携、住民参加、民間非営利団体の役割に関わらせて説明しなさい。 5月午後
③現代社会におけるコミュニティと地域福祉の関係について、戦後における地域社会の変化に着目して説明しなさい。 7月午前
④地域福祉とは何か。その理念と基本的な概念について説明しなさい。 7月午後
地域福祉とは、それぞれの地域において人びとが安心して暮らせるよう、地域住民や公私の社会福祉関係者がお互いに協力して地域社会の福祉課題の解決に取り組む考え方である。
日本の社会福祉は社会福祉六法を法的な根拠として、主な対象者ごとの処遇を決定している。しかし、地域福祉の分野は、地域社会において福祉の統合化を図りつつ、住民に共通する生活課題を対象としている。そのため、縦割り行政の弊害を見つめ、福祉行政の枠を超えて、関連の保険や医療、教育、個用住宅などに至る生活行政の再編集が課題となる。こうして住民の生活の場である地域社会において、新たな福祉の発展を促す実践を展開している。
こうした地域福祉の概念は、時系列の視点でとらえて「狭義の地域福祉」と「広義の地域福祉」に分けると内容が把握しやすくなる。ここで押さえるべき点は、地域福祉の概念を構成する上で必須の要件となった、諸外国からの福祉の方法論が与えた影響である。それにはまず戦後、日本の社会福祉協議会における活動論を基礎づけた、アメリカのコミュニティ・オーガニゼーションがある。その解釈から地域福祉の組織化活動の理論も導かれた。
1970年代に入ると、イギリスからコミュニティケアの考え方が導入され、在宅福祉の政策や関連するサービス推進に対する指針をあたえた。ほぼ同時期に、見本の主要な福祉研究者による独自の地域福祉の概念も次々と構築された。これらの概念は、そこに含まれる方法論のアプローチの特性から、次のように分類する考え方が定着している。
①構造的概念・・・地域福祉を政府、自治体の制度、政策論と規定する「政策制度論的アプローチ」と、地域福祉を国家独占資本主義段階における政府・自治体が採る社会問題政策と規定する「運動論的アプローチ」の二つがある。
②機能的概念・・・福祉サービスを受ける住民・要援護者サイドから地域福祉の体系を展開する「主体論的アプローチ」と、福祉サービスを供給するサイドから地域福祉の供給システムを構想する「資源論的アプローチ」の2つがある。
岡村重夫によって示された福祉コミュニティの概念が、地域福祉の指標になって今日に至っている。さらに「完全参加と平等」をテーマに掲げた1981年からの国際障害者年によって、ノーマライゼーションの理念が広く浸透し、地域社会における当事者の自立や環境改善の考え方を飛躍的に前進させた。
今後、コミュニティという生活の場を拠点とし、広義の地域福祉における諸課題を見据えながら、狭義の地域福祉として用いられる技術を効率的・有効的に使用して、望ましい福祉コミュニティを形成することが目標である。
以上が、地域福祉の理念と基本的な概念である。
⑤地域福祉にかかわる計画について、対象の持つニーズ把握の方法と計画の策定、財源確保の問題に言及して説明しなさい。H22-7月午前
地域社会の実現には、到達目標や推進条件を示した地域福祉計画の策定が重要である、社会福祉法では、市町村レベルのものを「地域福祉計画」都道府県レベルのものを「地域福祉支援計画」と呼んでいる。また、社会福祉協議会のものは「地域福祉活動計画」とよんで区別する。
地域策定計画の策定過程は、①構想計画:計画の方向を示し、計画目標を設定②課題計画:福祉ニーズを明確にしプログラムの具体的内容の決定③実施計画:期間、予算、人材などの実施手続きを決める④評価:実施家庭状況を確認し、目標達成度を測定する。
そして、対象ニーズを把握することが重要である。
・地域福祉の中心的内容に直接かかわる財源
公的財源と民間財源がある。国と地方自治体が負担する公的財源には、2000年4月介護保険制度の施行によって、社会福祉法の施行をはじめとする社会福祉基礎構造改革が行われ、福祉サービスは措置のシステムから、契約のシステムへの転換がはかられ、国からの措置費、補助金、委託金によって事業を実施するというこれまでの方式とともに、介護サービスや地域福祉権利擁護事業など、保険料、利用料によって事業を実施するという方式が加わり、その財源構造が大きく変わった。一方、民間財源は、共同募金や社会福祉基金のほか、日本自転車振興会、日本小型自動車振興会、日本船舶振興会など、公益競技による、公益をもとにした社会福祉党の公益事業に対する補助、各種助成団体などのさまざまな方法で調達され、民間社会福祉事業に支出される。
公的財源と民間財源という2つの財源は、歴史的には公的責任は未確立な中で、民間資金が公的財源の不足部分の一部を補うという役割を果たしてきたが、地域福祉という新しい社会福祉の展開の中でそのありがたが改めて論議されてきている。
⑥地域福祉を構成するものは何か。基本的視点と具体的な構成要件について述べなさい。H22-7月午後