EU統合はそこに暮らす人々、ひいては世界の人々の幸福にどのような貢献を果たすと考えられるか。またそれがもつジレンマとは何か。もっとも基本的な目的と具体的な発現状況を要約して述べよ。
ヨーロッパでは、国境が消えようとしている。
国境の廃止は、単に交通が自由になるというだけでなく国民国家の時代のキーワードの意味の変更により新しい用語を呼びだしているのだ。
しかし、それは国家を超える試みなのか?それとも、ヨーロッパというより強力な国家を作ろうとする試みなのであろうか?
EUは、地域統合の先進例として注目を浴びている。ヨーロッパ大陸の歴史をさかのぼっていくと、隣の国同士である国々が、絶え間なく戦争を繰り返してきている。それは、現代の地域の統合によって、平和な国にしようとする強い思いが込められているのだ。
EUの前身であるECを経て、1993年に欧州連合条約(マーストリヒト条約)によってEUが設立された。
このヨーロッパ統合においての利点は、シェンゲン協定の発効によって域内の移動の自由化が促進された。これは国境通貨手続きの負担の大幅な削減になった。
だが、ヨーロッパ統合には問題点もあった。
まず...