第1設題 物権と債権の違いについて
はじめに
民法においては、財産権を、物に対する権利である物権と、人に対する権利である債権とに大きく二分している。財産権を統一的に定義した規定というものはないが、教科書では物やサービスがもたらす経済的利益を内容とする権利として定義づけている。以下では、財産権を二分する物権と債権の違いについて、それぞれの特徴を明らかにしつつ考えていきたい。
1.物権
物件とは、特定の物を直接に支配できる権利であり、物を意のままにどのようにでも支配できる所有権が物権の典型である。たとえば所有者は、訪露津の範囲内で自分の意のままに処分することができ(民法206条)、権利の実現が自分だけでできる(直接性)。物権は、誰に対しても主張でき(絶対性)、一つの物の上に物権が成立すると、その後にそれと両立しない物権は成立しない(排他性)。物権はこのように強力な権利なので、法律に定められた以外に勝手に新しい物権を作ることは禁じられる(物権法定主義。民法175条)。
物権変動、すなわち、売買による所有権の移転のように物権の設定や移転の際には、このことが外部に見えるように公示手続きをふ...