福祉国家とは
1.はじめに
「福祉国家」とは、社会保障政策や完全雇用政策などを通じて国民の福祉を積極的に増進しようとする国家のことである。第二次世界大戦中においてはナチスの「戦争国家」と対比され、現代では先進資本主義国の国家のあり方を表す言葉として使われる。
「福祉国家」の発展は、「国民国家」の発展に密接にリンクするものといわれている。しかしグローバル化の進む現在、国民国家の象徴である独占的な政治および経済的権限が「危機」にさらされており、それによって「福祉国家」も同時に再編を迫られている。そこで本稿では、変容する「福祉国家」をよく理解するために、現在まで「福祉国家」の捉え方はどのように変化してきたのか、そして日本における福祉国家はどう展開してきたのかについて考察していきたい。
2.比較福祉国家研究
2-1.収斂論・類型論
1960年代から70年代の初期の福祉国家研究では、福祉国家発展の軌跡をとらえるとともに、その要因が何であるかを明らかにすることが研究テーマであった。この時期に活躍したウィレンスキーやカットライトなどは、各国の経済水準や社会的な条件が福祉国家形成の要因...