相談援助の理論と方法

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    『相談援助の理論と方法①』
    「システム理論についてのべなさい」

    資料の原本内容

    『相談援助の理論と方法①』
    「システム理論についてのべなさい」
     M.リッチモンドは、「ソーシャルケースワークは人間と社会環境との間を個別に、意識的に調整することを通して人格を発達させる諸過程である」と、1922年に『ソーシャルケースワークとは何か』で述べた。
     ソーシャルワークは、その対象を、人とその環境の交互作用の視点で把握して援助するといわれ、これに焦点を当てて援助理論を確立したところに特徴がある。
     社会福祉援助活動(ソーシャルワーク実践)とは、それぞれの時代や地域特性といった背景を交錯させながら生じる個人と集団および、その環境間の不調和からもたらされる問題が、社会的援助を必要とするとき、その間題の解決もしくは問題を軽減するために展開されるものである。それは、社会福祉学を基に、ケースワーク・グループワーク・コミュニティワーク等を用いて、社会的に支援を必要とする利用者とその環境に働きかけることである。
     さて、人間と社会環境を一つの統合体として把握する方法論がシステム理論である。
     システムは相互作用する要素の集合と定義されるが、システムの境界設定に関しては考慮の必要がある。あるシステムの内部には下位システムがあり、境界の外には外部システムが存在する。このようなシステムの階層性の概念をホロンという。システムはそれが最小のシステムでない限り、より小さなシステム要素よって構成され、同時にそれが最大のシステムでない限り、さらに大きなシステムを構成するシステム要素であるといえる。
     社会福祉の分野では,貧困や精神的・心理的な障害の原因を対象者自身に求める考え方が主流であった。しかし近年、社会環境との摩擦や環境自体のもつ問題が原因で利用者の困難が生じていることが見直され、利用者とその周辺の環境要因をシステムとして捉えて、援助の対象と考えるようになった。システム理論に基づき、ソーシャルワーカーが直接援助・間接援助の技術を使い分けながら多様な実践を行うジェネラリスト・アプローチという考え方が定着してきている。
     システム理論には歴史的に3つの発展段階がある。第一世代は、一般システム理論の世代である。生物学者ベルタランフィがこれを発表し、有機体の全体性を包括的に説明した理論である。この理論は、それまで主流だった還元主義に基づく近代科学に対して、有機体の構成要素を分断せず構成要素間の関係性に注目した点に特色がある。①有機体の各構成要素間の相互作用・相互制御に基づく全体性、②開放システムによる外的諸条件との相互作用、③ホメオスタシス(恒常性維持)の三つの基本概念からシステムの特徴を説明する。「関係」に力点がおかれた概念である。
     第二世代システム理論は、自己組織化論である。逸脱としてのゆらぎが秩序維持のシステムのよってかき消されず、増幅され、質的に異なった新しい領域に向かってシステムが動いていくように、それ自体で形成過程を経るシステムである。「生成」や「秩序形成」に力点がおかれた概念である。
     第三世代システム理論は、オートポイエーシス論である。システムを自己決定しているシステムであり、みずからの構成要素と相互作用しながら作動することでみずからの構成素を次々に産出している自己言及システムである。生物の生殖が分かりやすい例である。社会学者ルーマンは、オートポイエーシス概念を導入して「社会システム理論」を発表した。

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