『福祉行財政と福祉計画』
「福祉計画の策定方法と留意点および評価方法について述べなさい。」
『福祉行財政と福祉計画』
「福祉計画の策定方法と留意点および評価方法について述べなさい。」
福祉計画も計画の一つであり、その基本的過程は他の計画と同じである。そのため、福祉計画においても計画の過程は、策定(Plan)→実施(Do)→評価(See)と進んで、再度策定されていく一連の循環過程として考えることができる。このように計画を一定期間で見直していく方法は、一般に「ローリング方式」と呼ばれている。
福祉計画の策定の過程では、構想計画、課題計画、実施計画、評価計画が段階的に策定される。福祉計画の策定は必ずしも直線的に進むものではなく、様々なフィードバックを繰り返しながら螺旋状に進んでいく。多くの自治体では、計画策定委員会が組織されるのが一般的である。
実施の過程では、計画書にしたがって実施される。進行管理委員会が組織され、進行管理がなされる。モニタリングが随時行われて、計画の軌道修正がなされていく。
評価の過程は、アカウンタビリティの重要性が近年提起されてきたことにより、不可欠と考えられている。評価委員会によって、評価調査が行われる。福祉サービスの評価は、その性格から難しいものではあるが、技法としては、プログラム評価、実験計画法などがある。
福祉計画は、このような段階を経て作られることが一般的ではあるが、常にこの順序で進行するとは限らない。既存の事業に何らかの問題が発生しそれを解決しなければならない場合は、モニタリングの情報が元となるため、実施から始まる。政治的・経済的な環境の変化による問題が生じ計画期間終了後の計画を継続する必要がある場合は、評価の情報に基づくため、評価から計画が始まると言える。
平成15年施行の「社会福祉法」の第107条では、市町村地域福祉計画が規定されている。「市町村は、地方自治法第2条第4項の基本構想に即し、地域福祉の推進に関する事項として次に掲げる事項を一体的に定める計画(市町村地域福祉計画)を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者その他社会福祉に関する活動を行う者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、その内容を公表するものとする。」というものである。事項としては、「地域における福祉サービスの適切な利用の推進に関する事項、地域における社会福祉を目的とする事業の健全な発達に関する事項、地域福祉に関する活動への住民の参加の促進に関する事項」の3つである。第108条では、都道府県地域福祉支援計画が規定されている。
これに関連した「市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画策定指針の在り方について」という報告書では、計画策定の手順が、大きく三段階に分けられている。第一段階は準備段階、第二段階は住民等自身による課題の把握と地域福祉計画の策定、第三段階は計画の実施と評価・見直し軽減である。先に述べた福祉計画の過程で言えば、第一・第二段階は策定、第三段階は実施と評価に相当する。
福祉計画の過程における留意点としては、福祉ガバナンスの視点と社会福祉援助技術の視点の2つが挙げられる。前者の福祉ガバナンスについては、「福祉計画は単なる行政計画ではなく社会計画の側面も有しているため、福祉に関わる様々な行為主体がコミットすることでその実効性が高まる」という考え方である。後者の社会福祉援助技術の視点については、利用者を援助することにより福祉コミュニティを実現していこうという考え方である。福祉計画により、利用者のみならず地域社会に介入していくことが可能である。