更生保護制度

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    『更生保護制度』
    「更生保護における近年の動向と課題について述べよ」

    資料の原本内容

    『更生保護制度』
    「更生保護における近年の動向と課題について述べよ」
     更生保護制度とは、犯罪や非行をした人たちに通常の社会生活を営ませながら、必要な指導や援助をし、これらの人たちが健全な社会の一員として自立することを支援する制度である。更生保護は、刑事政策上の一分野である。
     更生保護法は、犯罪者及び非行少年の更生及び保護観察制度の運用など再犯の予防に関する手続や、これらに関する行政機関について規定する。犯罪者予防更生法と執行猶予者保護観察法の整理・統合を目的とした新法として、2008年から施行された。
     更生保護法の第一条では、「この法律は、犯罪をした者及び非行のある少年に対し、社会内において適切な処遇を行うことにより、再び犯罪をすることを防ぎ、又はその非行をなくし、これらの者が善良な社会の一員として自立し、改善更生することを助けるとともに、恩赦の適正な運用を図るほか、犯罪予防の活動の促進等を行い、もって、社会を保護し、個人及び公共の福祉を増進することを目的とする。」と定められている。
     更生保護の内容の主なものとしては、次の通りである。①保護観察、②応急の救護等及び更生緊急保護、③仮釈放・少年院からの仮退院、④生活環境の調整、⑤恩赦、⑥犯罪予防活動
     「更生保護のあり方を考える有識者会議」が、2005年から2006年にかけて合計17回実施された。この報告書「更生保護制度改革の提言-安全・安心の国づくり、地域づくりを目指して-」では、更生保護における問題の所在と改革の方向性(課題)について述べられている。これについて以下に述べる。
     問題点として、大別して次のような三つのものがあるとされる。①更生保護制度の運用についての国民や地域社会の理解が不十分であること、②民間に依存した脆弱な保護観察実施体制、③指導監督・補導援護の両面で十分に機能していない保護観察
     これらの問題点ごとの改革の方向性としては、以下の通りである。①国民・地域社会の理解の拡大、②官の役割を明確化し、更生保護官署の人的・物的体制を整備することにより、実効性の高い官民協働へ、③保護観察の有効性を高め、更生保護制度の目的を明確化し、保護観察官の意識を改革すること等により、強靭な保護観察の実現へ
     このうえで、当面の課題としては、以下の六つが挙げられる。①保護観察の充実強化、②執行猶予者保護観察制度の運用改善、③仮釈放のあり方の見直し、④担い手のあり方の再構築、⑤国民・地域社会の理解の拡大、⑥更生保護制度に関する所要の法整備
     中・長期的課題としては、以下の三つである。①刑期満了者に対する新たな制度の検討、②執行猶予の取消し等いわゆる不良措置制度についての総合的な見直し、③保護観察における情報機器の活用
     この報告書の冒頭では、「我が国の更生保護制度は、抜本的な改革を必要としている。更生保護制度の目的は、犯罪や非行をした人の改善更生を助け、その人による再犯を防止し、社会を保護することである。しかし今日、更生保護制度は、機能不全に陥りかけており、その目的を十分に果たせていない。更生保護制度が直面している事態の深刻さは、保護観察対象者による重大再犯事件が相次いだことなどから露呈した。再犯を防止する機能の現状に対し国民の厳しい目が向けられ、更生保護制度全般を抜本的に検討・見直すことが急務となった。」と述べられ、更生保護制度の現状についてシビアに捉えられている。「犯罪や非行をした人たちが、一人の国民として尊重され、差別されることなく、地域社会で他の住民たちと共に生き、他者の人権を侵害する過ちを二度と繰り返さずに生き抜く意欲を持ち続けられるような成熟した社会、真に安全・安心が確保された社会を実現するための一助となることを願う」とされている。

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