『高齢者に対する支援と介護保険制度2』
「「終末期ケア」について述べなさい」
『高齢者に対する支援と介護保険制度2』
「「終末期ケア」について述べなさい」
「終末期ケア」とは、テキスト(『新・社会福祉士養成講座 第13巻 高齢者に対する支援と介護保険制度』)では、高齢者の「End-of-Life Care」の訳語として用いられている。それは、「生命を脅かす進行性あるいは慢性の状態で生き、あるいはそれによって死にゆく個々の高齢者を治療し、慰め、支える、能動的で共感的なアプローチを必要とする。また、個人的、文化的、そしてスピリチュアルな面での価値観、信仰、習慣に配慮する必要がある。さらに死別前後の、家族や友人に対するケアを行う」と説明される。
終末期ケアに関わる用語としては、ターミナルケアやホスピスケアといったものがあり、我が国では混在して用いられており、十分に整理がなされていない状況である。欧米における終末期ケアの概念についての用語は、学術的に以下のように定まっており、ケアをめぐる概念の変遷にも通じている。
ターミナルケアとは、「死に行く人の症状を軽くさせ、患者と家族の両方をチームで支えようとするケアである。死の瞬間まで、身体機能や精神機能の潜在能力を引き出し、できる限り自立して生きることをサポートする」と定義される。これは、イギリス人のソンダースによるものである。彼女は、ロンドン郊外にセントクリストファーホスピスを1967年に開設した。また、末期癌患者をケアする場合、そのケアのあるべき哲学を最も重視し、この哲学をホスピスケアの中心に位置づけた。
ソンダースの基本的な考え方はホスピスケアの基準として整理され,1979年に全米ホスピス協会(National Hospice Organization=NHO)の基準として以下のように整理された。ホスピスケアの基本的な考え方は、癌の末期状態であることを認識している患者と家族に提供されるケアであること、医療処置の考え方は症状緩和のみということ 、痛緩和の考え方は痛みの予防ということ、学際的なチームワークで支えること、家族と友人の積極的な役割があること、ボランティアの積極的な参加があることなどである。
ホスピスとは、本来は施設を表す言葉ではなく、主に末期癌患者や様々な疾患で苦しんでいる人に対し、人生の最期を患者が安らかに過ごせるよう援助することを言った。現在では一般的に、終末期ケアを行う施設のこと、または在宅で行う終末期ケアのことをいう。
1990年以降は、整理され、ホスピス・緩和ケアと併記して用いられるようになった。これは、「治療不可能な状態にある患者および家族のクオリティオブライフの向上のために、さまざまな専門家が協力してつくったチームによって行われるケアを意味する。そのケアは、患者と家族が可能な限り人間らしく快適な生活を送れるように提供される」と説明される。
リンとアダムソンは、高齢者が死に至る経過には次の3つのパターンがあると述べる。①癌等…死亡の数週間前まで機能は保たれ、以後急速に低下する。意識や認知能力は通常最後まで保たれる。②慢性疾患(心臓・肺・肝臓等の臓器不全)…ときどき重症化しながら、徐々に2~5年で機能が低下し、病状が悪化していく。③老衰・認知症等…長い期間にわたり徐々に機能は低下する。
それぞれのパターンごとの治療・ケアを受けるのにふさわしい場所としては、①では、末期を明確に規定できることから、緩和ケア病棟・ホスピス等である。②では、医療管理が必要であるため、リハビリテーションの態勢が整っている療養病床である。③では、医療よりも介護重視であるため、生活の場としての配慮がなされている療養病床、または介護福祉施設である。本人・家族が共に望めば、自宅での終末期ケアがいずれも場合においても最適と考えられる。