心理学理論と心理的支援
「発達障害について簡潔にまとめなさい」
心理学理論と心理的支援
「発達障害について簡潔にまとめなさい」
平成十六年に、「発達障害者支援法」が施行された。第一条ではその目的は、「発達障害者の自立及び社会参加に資するようその生活全般にわたる支援を図り、もってその福祉の増進に寄与すること」とされている。そして、発達障害を早期に発見し、発達支援を行うことに関する国及び地方公共団体の責務を明らかにしている。また、学校教育における発達障害者への支援、発達障害者の就労の支援、発達障害者支援センターの指定等について定められている。発達障害者の心理機能の適正な発達及び円滑な社会生活の促進のために、発達障害の症状の発現後できるだけ早期に発達支援を行うことが特に重要であると考えられる。
第二条では、言葉の定義がなされている。「発達障害」とは、①自閉症、②アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、③学習障害、④注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとされる。これに関連する言葉として、「発達障害者」とは、発達障害を有するために日常生活又は社会生活に制限を受ける者をいう。「発達障害児」とは、発達障害者のうち十八歳未満のものをいう。「発達支援」とは、発達障害者に対し、その心理機能の適正な発達を支援し、及び円滑な社会生活を促進するため行う発達障害の特性に対応した医療的、福祉的及び教育的援助をいう。
続いて、法律で定義される発達障害のそれぞれについて述べていく。
①自閉症は、次の3つの特徴をもつ障害である。(1)対人関係の障害、(2)コミュニケーションの障害、(3)限定した常同的な興味、行動および活動。3歳までにはこれらの何らかの症状がみられる。
②広汎性発達障害(PDD)の特徴は、自閉症のものと同様である。それぞれの特徴が顕著である場合は自閉症とされる。それぞれがそれほど強くない、或いは発症年齢が遅いといった場合は、非定型自閉症・特定不能の広汎性発達障害と診断される。また、知的発達の遅れや言葉の発達の遅れがなく、対人関係以外ではある程度適応能力をもっている場合はアスペルガ-症候群と診断される。広汎性発達障害のある人は程度の差はあるが、他の人との感情を共有しにくく、人に合わせて行動することが苦手である。先の見通しをつけることが苦手、特定の匂い・音などの刺激に敏感、時間を見計らって行動することが苦手、聞くときなど必要な刺激を選択できにくい、突然過去の記憶を鮮明に思い出してそのときと同じ気持ちになってしまうことなどがあり、感覚の特異さに特徴がある。
③学習障害(LD)は、全般的な知的発達の遅れはないが、聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する能力の習得と使用に著しい困難を示す者と定義される。このような子どもは、一部の能力のみが劣っているので、周囲にそのことが分かりにくい。そのため、一部の能力が発揮できないのは、なまけているからだと思われることがある。
④注意欠陥多動性障害(ADHD)は、日常生活に著しく支障を来すほどの多動・注意集中困難・注意転導・衝動性が目立つことをいい、その症状は通常7歳以前にあらわれる。抑制機能の障害の他、以下の4つの実行機能に問題があるといわれている。(1)思い浮かべて考える非言語性ワ-キングメモリー、(2)話す必要のないことは話さないこと・言葉で考えること、(3)気分・覚醒状態の制御、(4)行動を分析して新しい行動を作り出す能力、である。
発達障害の症状やその程度は、年齢で変化する。小学校高学年ころになると問題が少なくなって周囲に適応していったり、大人になると自ら適した環境や適した職業を選び個性的な仕事で認められるようになる人も多い。
彼らに対しては、幼いときから、人との係り方を丁寧に学ばせていく必要がある。人とのやりとりの仕方や基本的なル-ルを教え、行動や情緒を自己コントロ-ルする力を養わせていき、得意なところも見いだして評価することで、自信を育むことが大切である。