佛教大学 日本文学概論の合格レポートです。
芥川龍之介の『鼻』を読み、出典と比較して論ぜよ。
まず、「鼻」についての違いについて考える。
今昔物語には、次のように書かれている。
「さてこの内供は鼻長かりけり。五六寸ばかりなりければ頤より下りてぞ見えける。色は赤紫にて大柑子の膚のやうに粒立ちて脹れたり。痒がる事限りなし。」
芥川龍之介の『鼻』を読み、出典と比較して論ぜよ。
まず、「鼻」についての違いについて考える。
今昔物語には、次のように書かれている。
「さてこの内供は鼻長かりけり。五六寸ばかりなりければ頤より下りてぞ見えける。色は赤紫にて大柑子の膚のやうに粒立ちて脹れたり。痒がる事限りなし。」
芥川の鼻に関する描写は次のようになっている。長さの描写に加え、「腸詰めのような」と表現しているところが特徴的である。
「長さは五六寸あって上唇の上から顋の下まで下っている。形は元も先も同じように太い。云わば細長い腸詰めのような物が、ぶらりと顔のまん中からぶら下がっているのである。」
『今昔物語』に登場する内供も、芥川の小説に登場する内供もどちらも鼻が大きいことに悩んでいるのだが、両者の鼻が小さくなった理由は異なる。
「提に湯をかへらかして折敷を鼻さし入ばかり彫り通して火の炎の顔に当らぬやうにしてその折敷の穴より鼻さし出でて提の湯にさし入れて能く茹て引上げたれば色は濃き紫色なり。それを側ざまに臥せ下に物を当てて人に踏ますれば粒立ちたる穴毎に煙のやうなる物出づ。それをいたく蹈めば白き虫の穴毎に...