未成年者の行為能力について,検討する。
まず行為能力について検討した上で,未成年者につき検討する。
1 行為能力について
なぜわが民法は行為能力を制限する類型を
作成しているのか,その制度趣旨を考える。
(1) 権利義務の関係と意思
近代法は,人が他人に対して拘束力をもつ根拠を,それによって拘束されるものの意思に求めた。換言すれば,意思を中心的要素として,それに基づいて私法上の権利義務の変動が生じる物としたのである。このような構成を意思主義と呼ぶが,表意者の相手方からすれば,表意者の真意は,表示されたところから推断するほかはなく,表示を信頼して一定の法律関係が設立された場合に,実はその表示に対する意思がなかった時には,それがため,いったん生じた法律関係が,完全に消滅するという不利益を被ることになる。この点逆に,法律行為において法的評価の重点を表示におく構成を表示主義という。近時は解釈論としても,表示に重点をおく方向に移りつつあり,(意思主義から表示主義へ),これに応じて,契約の拘束力も,意思中心主義から,表明された言葉への信頼を裏切ってはならないという,社会的倫...