刑法各論答案:不動産の二重売買 横領罪

閲覧数4,121
ダウンロード数17
履歴確認

    • ページ数 : 2ページ
    • 全体公開

    資料紹介

    学部試験の論述対策用。評価はありません。参考までに御覧ください。

    資料の原本内容

    刑法各論:不動産の二重売買 横領罪252条

     Xは、自分の不動産をAに売却したが、Aが所有権移転登記を完了していない間に、その事実を知っているBの要請によって、同じ不動産をBに売却した。
    一、 Xの、自分の不動産をAに売却しその後同じ不動産をBに売却した行為は、不動産の二重売買にあたり横領罪(252条)を成立するか。また、Bは横領罪の共犯(65条)が成立するか。
    二、 まず、XはAに不動産を売却したが、所有権移転登記が完了していないため、Aは完全な権利者であるとはいえない。そのため、BがAより先に所有権移転登記をすると、Aの所有権は消滅し、Bに対抗できなくなる。よって横領罪の成立が問題となる。

     まず、Xの罪責についてであるが、Xは占有があるとして、その占有は委託信任関係に基づくものかが争点となる。次に、当該不動産は他人の物にあたるかが争点となる。

     

    三、 横領罪が成立するためには、Aに占有があることを要するが、本件Xは、土地を処分することが可能である以上、法律上占有があるといえる。占有の有無については、横領罪における「占有」は、事実上の占有のみならず、法律上の占有をも含み、乱用のおそれのある支配力でたりる。よって、登記名義があれば土地を更に処分しうるので、濫用のおそれがあるといえる。

     委託信任関係については、Xは売買契約に基づき乙のために本件土地を補完する義務を負う以上、委託信任関係があるといえる。委託信任関係の有無については、横領罪における委託信任関係は、具体的な委託に基づくものである必要はなく、契約の効果として、一方が他方に法的義務を負うとすれば足りると解する。二重売買において売主は、所有権移転登記に協力すべき義務を負い、さらに、第三者に対抗できないような状況にならないよう阻止する義務を負うからである。

     次に、本件土地は「他人の物」すなわちAの所有物であるといえるかについてであるが、思うに、第一の売買契約が成立している以上、民法上は契約時に占有が移転すると考えるのが一般的である。しかし、かかる所有権は、一般的なものにすぎず、これを一般的に横領罪によって保護するのは、処罰範囲を不当に拡大することとなるため妥当ではない。刑法上の刑罰を用いるだけの要保護性の視点も考慮しなければならない。そこで、すでに代金が支払われているか、あるいは登記に必要な書類の授受がなされているか、といったように、刑法的保護に値する場合に限って「他人の物」と解する。従って、Aが代金を支払っている場合には「他人の物」といえる。

     さらに、不法領得の意思については、Bが登記を具備した時点で、実質的な財産の利益侵害が発生するといえるため、登記移転をもって不法領特の意思が確定的となり、横領罪は既遂となる。
     次に、Bが悪意により同不動産を譲り受けた行為は、横領罪の共犯にあたるか。

    民法上は、悪意による場合であっても登記を具備すれば自由競争の枠内の行為として適法に所有権を取得する。とすれば、かかる行為について犯罪の成立を認めることは、刑法の謙抑主義や、法秩序の統一性という見地から妥当ではない。よって、Bが積極的にAを害する目的で働きかける場合などの、背信的悪意者の場合のみ、刑法上の罪責を負う。

     Bが背信的悪意者である場合は、65条の共犯は共同正犯を含むかという点が問題となる。Bが背信的悪意者であるとしても、横領罪は真正身分犯であるため、Bに共同正犯の余地があるかが問題となる。真正身分犯を認める説からは、横領罪の共同正犯が成立し、真正身分犯を認めない説からは横領罪の教唆犯が成立する。

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。