我が国の精神障害者の歴史は、人権侵害の歴史と言える。
わが国の精神障害者に関する最初の法律は、1900年に制定された精神病者監護法であり、この目的は、精神病者の中には社会に害悪を流す者が多く、治安を第一に考え、精神病者を保護し社会に害が及ばないようにするために私宅監置(座敷牢)を合法化したという社会防衛思想に基づくものだった。また、精神病者は「監護」されるべき対象であり、それは親族(家)の責任であると定められている。
1950年、精神衛生法が成立、これまでの私宅監置制度や治安対策に代わって精神障害者の医療や保護を行い、国民の精神的健康の保持や向上を図ることを目的としたものだったが、基本的には、措置入院や同意入院が入院制度の中核であり、私宅監置を認めず精神病者は精神病院以外に収容しないことを明確にするなど社会的防衛思想を残したものだった。この法では、保護義務者を医療の協力者として明確に規定し、医師の診断に協力する義務や、受療場面では医師の指示に従う義務、退院時の引き取りや退院後の保護義務を家族に課したのである。また、1964年にはライシャワー事件が起き、マスコミが一斉に糾弾、その結果、法...