日常生活を営むうえで必要なものは、いずれも市場を通して自由に購入することができる。「もの」や「サービス」を購入することで、日常生活を安心して暮らすことができるとなれば、市場は、人々の福祉に重要な役割を果たしていることになる。
「もの」や「サービス」を購入するために、多くの人々は、労働市場で自らの労働力を商品として売る必要がある(労働力の商品化)。しかし、失業や病気などで労働ができなくなると、市場を通じて福祉の増大を図ることが不可能になる。その結果として経済的不平等や格差が生じたとしても、これを是正する機能は市場にはなく、また、独占的な企業が「売控え」や「買占め」などによって価格をコントロールすることもある。このような状況を市場の失敗(市場の機能不全)といい、政府による介入を正当化する理由ともされてきた。例えば、独占禁止法のもとでの公正取引委員会の活動、外部不経済が極めて大きい銀行や企業に対する規制や政府資金の投入などは、市場の機能不全をただす名目で正当化される。
日本国憲法25条1項に規定される生存権に加えて、同法2項では、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び...