「福祉国家の思想と原理について述べよ。」
「ゆりかごから墓場まで」というキャッチフレーズにのって登場した「福祉国家」は、第2次世界大戦後の先進諸国の歩むべき途を指し示すものであった。「福祉国家」という言葉は、第1次世界大戦と第2次世界大戦の間に挟まれたこの時期のイギリスにおいて、ナチズムの「社会国家」などに対抗する国家の理念を表すものとして使われだしたという。
当時のイギリスの政策では、社会保険制度を中心に公的扶助制度を補足的に組み合わせ、国民全体の窮乏を解消することを主眼においていた。さらにすべての国民の安定した生活を保障するために、個々人に直接関わるサービスを提供し、社会保障と社会福祉サービスが一体化した形でサービスが実施されることを狙ったのである。
当時、戦時体制下にあったイギリスでは、国民の生活は困窮し、個々人の努力だけでは解決できない一般生活水準の向上と、すべての国民に安定した快適な生活を保障するために、ベヴァリッジを委員長とする委員会が、いわゆる「ベヴァリッジ報告」を発表した。「社会保険及び関連諸サービス」というこの報告書は、それまでの乱立していた非効率な社会保障の...