【日大通信】国文学講義Ⅰ(上代)分冊1 H25-26年度課題 合格リポートです。「紀記歌謡における反復法の起源とその理由について説明しなさい」
「丁寧に説明はされていますが、賛成でも反対でも、もっと自分の考えを述べてみましょう」との講評をいただいております。
参考用としてお使いください。
上代歌謡、特に記紀に記されたものに、反復、つまり繰り返しが多いことは、広く一般的に認められている事実である。例えば、
今はよ、今はよ、ああしやを。今だにも、吾子よ、今だにも、吾子よ(紀10)
訳:今はもう、今はもう、敵をすっかり討ち滅ぼしてしまった。今だけでも、わが軍よ、今だけでも、わが軍よ
これを見ても、どれだけ繰り返しが多いかが分かるだろう。では何故これほどにも反復が多いのだろうか。それは上代人の表現法の未熟と誦謡の必然性から来ていると思われる。表現法の未熟ということは、彼らの知性の貧困ということにも起因する。発表しようとする内部的感情や思想が多分にあっても、これをある一定の観念語に整理統合して、順序良く発表するだけの言語的表象能力をまだ持ち合わせていない。また、内部心情を表出すべきある種の観念が浮かんだとしても、それに関するいくつかの連想的観念が機械的に次々と見つからない限り、初めに見出した一つの観念にとらわれて、いつまでも同一観念語を繰り返しているに過ぎない。このことは幼児の言語操作を見てもわかることである。幼児の知性は薄弱であり、情意も決して豊富とはいえない。しかし年齢...