EU統合はそこに暮らす人々、ひいては世界の人々の幸福にどのような貢献を果たすと考えられるか。またそれがもつジレンマとは何か。もっとも基本的な目的と具体的な発現状況を要約して述べよ。
まず、EU統合の経緯について述べたい。ヨーロッパは、長年の間多くの国家に分割され、互いに緊張関係を続けてきた。長い歴史の中で、歴史に名を残したナポレオンやオスマントルコ、ヒットラーもヨーロッパ全土を支配権を握ることはなかった。それが、20世紀末になって初めて欧州統合という歴史的な大展開をもたらした。1967年7月1日に発足した欧州共同体(EC)と、1952年に発足した欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)と、欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)を基礎として。1992年2月7日に調印した欧州連合条約(マーストリヒト条約)が、1993年11月1日に発行し、ヨーロッパの政治経済の統合を目指し、加盟国間の相互協力を強化することを目的として欧州連合(EU)が発足したのである。
EUの最も大きな成果は、経済統合の最終形とも言える通貨統合を実現させたことである。1998年6月に、物価安定を図るマネーサプライ政策を中心として、金融政...