南北問題の発生とその変遷を踏まえて工業化戦略の展開についてまとめなさい。
南北問題とは、1959年にオリバー・フランクスが、地球上の北側にある先進国と南側にある途上国の経済格差について提唱したものである。第二次世界大戦後、戦前に植民地だった地域が独立を果たした。戦前の欧米諸国の植民地政策は、伝統的な現地経済の一部を欧米諸国の飛び領土として占有したもので、植民地は一次産品の生産拠点として利用された。インフラを含む植民地への投資は、産業を円滑に動かすためだけのもので、植民地を発展させるものではなかった。
戦後、途上国は自立的発展を試みた。GATTの基本理念は自由・無差別・多角主義だが、これは各地域の経済構造が同じであるという非現実的な仮定から生まれたものである。これには、計画的な開発政策や貿易政策を行う必要のある途上国の立場が反映されていない。またGATTでは、貿易自由化による工業製品の関税引き下げが重点におかれる一方、途上国が関心のある一次産品は先進国が国内農業保護を主張した。そのため、貿易収支の悪化と対外債務の増加に悩まされた途上国は、GATTを批判し、貿易収支の赤字拡大を防ぎ工...