文化人類学とは19世紀後半より発展していったものであり、それ以前に主流を成していた「己の社会を通し自己をみつめる」という社会学に対し、「異文化を通し他人をみつめる」という作業を行うものである。「他者」という存在がいることにより、その対を成す「自己」が存在することになる。よって文化人類学とは、他者をみつめることを通し自己を認識する作業なのである。
しかし、「自己」と「他者」をどこに設定し、何を「異文化」として指すかにより、文化人類学におけるものの見方は大きく異なってくる。それは例えば友人間に、隣国間に、あるいは発展途上国と先進国との間に置き換えることができ、そしてそれは視点により、細かいズレが生じることから真逆の立ち位置に到達することさえある。それほどまでに、人類の在り方は多様なのである。よって、ある文化の比較を考えるときには、「自己」という概念をある一点に固定するのではなく、まさに上から俯瞰して捉える必要がある。
それでは、そこまで多種多様を極める「文化」とはどういったものなのか。定義は様々であるが、最も有名なものはE.タイラーが『原始文化』の中で述べた「知識、進行、芸術、法律...