振り子の周期

閲覧数4,047
ダウンロード数3
履歴確認

    • ページ数 : 8ページ
    • 全体公開

    資料紹介

    1.概要
    一般的に知られている振り子の周期を求める式2π√(l/G)はθとsinθがほぼ等しくなる微小角度の場合であり、広い角度においては誤差が大きくなるので適用できない。広い角度の周期を求めようとすると難解な数式である楕円積分を解かなければならないので高レベルの知識が要る。そこで高校物理程度の知識で0度から180度までの任意の角度に於いて周期を求める方法を考案したので紹介する。また周期計算過程で振り子の速度を計算し、更に速度から振り子の張力を計算した。振り子の周期は既に厳密解から正しい答えが得られており、また速度と張力は位置エネルギーを運動エネルギーに変換することにより容易に計算出来ることが分かっているので、本考案による計算結果とこれらの結果を比較して本考案が高精度で計算できることを確認した。

    振り子の周期を求める方法として、おもりが円弧に沿って進むときの支点との角度を等間隔に微小分割する方法とおもりが円弧に沿って進む時間を等間隔に微小分割する方法の2つの方法を記載した。

    <角度を等間隔に微小分割する方法>
    角度θをn分割し各Δθに於けるΔtを順番に求め、これらを合計し4倍すれば周期が計算できる。ΔθとΔtから加速度、速度、張力の順に計算できる。

    <時間を等間隔に微小分割する方法>
    周期をn分割し各Δtに於ける各速度の比率を各Δθに設定して計算を繰り返すことにより各Δθを求める。ΔθとΔtから加速度、速度、張力の順に計算できる。

    2.計算データ
    1) 振り子の周期   角度0度~180度、l=0.2m,1.0m,5.0mで比較
    2) 振り子の最大速度 角度0度~180度、l=0.2m,1.0m,5.0mで比較
    3) 振り子の張力   角度0度~180度、l=0.2m,1.0m,5.0mで比較
    4) 張力が時間とともに変化する様子  角度90度,180度
    5) 計算精度

    資料の原本内容

    分野 : 力学
    2015/02/16

    2015/02/16
    振り子の任意の角度に於ける周期と張力の計算方法

    振り子の任意の角度に於ける周期と張力の計算方法
    要旨 : 鋼体振り子の任意の角度に於ける周期と張力の計算方法について記述する。
    キーワード : 振り子の周期と張力、0度から180度までの任意の角度、微小角度、微小時間、高校物理程度
    [ l ]. はじめに

    一般的に知られている振り子の周期を求める式2π√(l/G)はθとsinθがほぼ等しくなる微小角度の場合であり、広い角度においては誤差が大きくなるので適用できない。広い角度の周期を求めようとすると難解な数式である楕円積分を解かなければならないので高レベルの知識が要る。そこで一般の方が容易に理解できるように、高校物理程度の知識で0度から180度までの任意の角度に於いて周期を求める方法を考案したので紹介する。また周期計算過程で振り子の速度を計算し、更に速度から振り子の張力を計算した。振り子の周期は既に厳密解から正しい答えが得られており、また速度と張力は位置エネルギーを運動エネルギーに変換することにより容易に計算出来ることが分かっているので、本考案による計算結果とこれらの結果を比較して本考案が高精度で計算できることを確認した。
    振り子の周期を求める方法として、おもりが円弧に沿って進むときの支点との角度を等間隔に微小分割する方法とおもりが円弧に沿って進む時間を等間隔に微小分割する方法の2つの方法を記載した。 2つの計算方法はそれぞれExcelファイルとして添付したが、これらのExcel計算ソフトでは設定した角度に対して周期、速度、張力の時間による変化を表とグラフで出力させた。
    [ 2 ] 本論

    1. 角度を等間隔に微小分割する方法

    1). 詳細説明

    振り子の周期は次の様にして求めることができる。おもりを離した位置からおもりが支点の真下に来るまでの角度をθとしてθをn等分する。θ/nをΔθとし、各々Δθ内ではおもりは等速度で進むとして実際の動きに近似させる。これは円弧を同じ角度が徐々に増えていく多角形で近似させたと考えればよい。計算条件としてnを増やしていけば実際の動きに近くなってくる。
    各区間の速度をvi 、各区間の初速度をv0i 、重力加速度をG 、各区間の進行方向の加速度をGi、各Δθを進む微小時間をΔti 、支点からおもりまでの長さをlとするとvi=v0i + Gi×Δti i : 1~nであらわされる。進行方向の加速度Gi は(図1)よりG×sinθとなる。例えばおもりを水平位置となるθ=90度の位置まで手で引っ張ってこの位置から離したとすると、最初のΔt1内ではG1=G×sin(π/2)=Gとなる。このときに初速度v01は0であり速度は加速度×時間だけになるのでG1×Δt1となる。角度Δθに進む距離は速度×時間なのでG1×Δt1×Δt1になる。また角度Δθに進む距離はl×θ/nとなるので、Δt1=( l×θ÷n÷G1)1/2となる。G1=G×sinθを代入してΔt1={l×θ÷n÷(G×sinθ)}1/2となり、Δt1を求めることが出来る。次のΔt2ではΔθだけ角度が減るのでG2=G×sin(θ-Δθ)となる。速度はv02 + G2×Δt1 = G1×Δt 1+ G2×Δt 2となる。角度Δθに進む距離は(G1×Δt 1+ G2×Δt2 )×Δt2になる。また角度Δθに進む距離はl×θ/nとなるので、(G2×Δt2×Δt2)+ (G1×Δt 1×Δt2) =l×θ/nとなる。これは二次関数の一般式でありΔt2 =-b+(b2-4ac)1/2からa= G2, b= G1×Δt 1, c= -l×θ/nと於いてΔt2を容易に求めることが出来る。以下Δt3~Δtnまで同じ方法で各微小時間を求めていってこれらをすべて合計し4倍すると周期になる。
                                (図1)
    また (図2)より張力は既に知られているようにm×G×cosθ+ m×v²/lで計算できるので、各Δtから各速度を求めて更に各張力を求めることができる。
    2). Excelで計算した結果

    n=200、各角度の繰り返し計算数=5の条件でExcelマクロにより計算した結果を紹介する。

    尚、進行方向の加速度G×sinθはG×cos(θ-π/2)に置き換えて計算した。
    <計算精度>

    (表1)と(表2)とに本案により計算した振り子の周期、最大速度、張力/質量の重力加速度比を既に知られている計算式での結果と比較した。計算条件はl = 1mとして(表1)がn=200、(表2)がn=3000で角度を30度ずつ増やして30度~179.9度までを比較した。n=200では0~150度まではどの項目も1.6%以内になることが分かった。n=3000に増やすと精度が上がり0~150度まではどの項目も0.15%以内になることが分かった。
    (表1)
    (表2)
    3). まとめ

    高校物理程度の知識により、振り子の角度を微小角度にn等分し、各微小角度に進む距離から各微小時間を求め、合計し4倍すると周期になる。更に各微小角度と各微小時間から速度、速度から張力を求めた。既に知られている計算式での結果と比較して計算精度を検証した結果、nを増やすことにより高い精度が得られることを確認した。
    2.  時間を等間隔に微小分割する方法 

    1). 詳細説明

    振り子の周期は次の様にして求めることができる。おもりを離した位置からおもりが支点の真下に来るまでの時間をt0としてt0をn等分する。t0/nをΔtとし、各々Δt 内ではおもりは等速度で進むとして実際の動きに近似させる。これは円弧を角度が徐々に増えていく多角形で近似させたと考えればよい。計算条件としてnを増やしていけば実際の動きに近くなってくる。
    各区間の速度をvi 、各区間の初速度をv0i 、重力加速度をG 、各区間の進行方向の加速度をGiとするとvi=v0i + Gi×Δt i : 1~nであらわされる。進行方向の加速度Gi は(図1)よりG×sinθとなる。仮におもりを水平位置となるθ=90度の位置まで手で引っ張ってこの位置から離したとすると、最初のΔt内ではG1=G×sin(π/2)=Gとなる。速度は加速度×時間なのでG1×Δtとなる。進む距離は速度×時間なのでG1×Δt×Δtになる。最初に進む角度をΔθ1とすると次のΔtではΔθ1だけ角度が減るのでG2=G×sin(π/2-Δθ1)となる。速度はv01 + G2×Δt = G1×Δt + G2×Δt = (G1+G2)×Δtとなる。その次のΔt内の速度は (G1+G2+G3)×Δtとなる。Δtに進む角度はそのΔt内の速度に比例するのでΔθ1:Δθ2:Δθ3・・・=G1:(G1+G2):(G1+G2+G3)・・・となる。ここで各Δtに於ける角度を求める方法を工夫した。まず1回目の計算では均等に各角度を設定して各Δt内の速度を計算する。次に2回目に同じ計算をするが、各Δt内の速度の比率を各角度に設定して初めに設定した角度と入れ替える。この時に各角度の合計はおもりを手で引っ張って離した位置から支点の真下の位置に来るまでの角度になるので、この角度を速度比で各角度に割り振る。そして各速度を再度計算し直す。これを複数回繰り返すと各Δtに対応する各角度の値がほぼ正しい値に収束する。 

                              

    Δtは次の様にして求めた。おもりを手で引っ張ってそこから離した直後のΔt後の距離は速度×時間よりG1×Δt×Δtとなる。おもりが支点の真下の位置に来た時のΔt後の距離は、同じく速度×時間より (G1+G2+G3・・・Gn-1+Gn)×Δt×Δtとなる。また支点からおもりの重心までの距離をlとすると、おもりを手で引っ張ってそこから離した位置から支点の真下の位置まで移動した全部の距離はl×θとなる。G1,G2,G3・・・Gn-1,Gnは繰り返しの角度計算により先に求めているので、これらの結果から全部の距離は{G1+(G1+G2)+(G1+G2+G3)+・・・・・・・・(G1+G2+G3・・・Gn-1+Gn)}×Δt×Δt=l×θとなりΔtを計算できる。Δtがわかると速度が計算できる。またΔtに4nを掛けて振動周期を求めることができる。この方法で任意の角度について全て同様に計算できる。
    また (図2)より張力は既に知られているようにm×G×cosθ+ m×v²/lで計算できるので、各角度から各速度を求めて更に各張力を求めることができる。
    検算として張力の垂直成分を時間で平均するとm×Gに等しくなる筈であり、グラフに追加した。これは次の事を想像するとわかる。一本のとても長い鉄棒にたくさんの同じ体重の人がぶら下がってバラバラに前後に身体を振っているところを想像する。これを巨大な体重測定機に乗せて全員の体重を測るとすると、張力の水平成分が打ち消されて垂直成分だけが残る。垂直成分は各人バラバラの位置にいるので、時間で平均した体重と同じになる。つまり乗っている人の全員の体重となる。 尚、角度が90度を超えるとおもりを離した直後の張力は押す方向になりマイナス符号が付くが、張力の垂直成分はプラスの質量となる。また角度が90度より大きい角度で張力が引っ張る方向の場合には、張力の垂直成分はマイナスの質量となる。これは次項の(表5)で説明する。
     (図2)
    <この計算方法のポイント>

    まず各Δtに於けるΔθを均等...

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。