「老いる」ということ
「老いる」という言葉を辞書で調べてみると「年が寄る。老齢になる。体が衰える年ごろに入る。」という意味が引けた。老い衰えるとはあまりいいイメージではない。
私のような医療職から「老いる」という言葉から思い浮かぶのは「老化」や「老年期」といった言葉である。「老化」とは、生物学的には時間の経過とともに生物の個体に起こる変化であり、 その中でも特に生物が死に至るまでの間に起こる不可逆的な全身の機能低下やその過程を指す。「老年期」はWHOでは、45歳以上を初老期 (または向老期。女性の場合は更年期) 、65歳以上を老年期 (または高齢期) としている。老年期は加齢の影響(生理的老化)に伴ってそれまでの生活習慣を基盤とした疾患が生じやすく、健康状態や生活機能が低下し、身体的、精神的に環境の変化に適応する能力が減退する時期とされている。
「老い」とは否定的にとらえられやすい言葉だと思う。「生老病死」という仏教の言葉がある。人間は、生まれること、老いること、病むこと、そして死ぬこと、すなわち「生老病死」が人間にとっての苦悩であるという意味である。現在の日本では、周産期死亡率...