このレポートは民法における債務不履行責任と履行補助者のる過失にちついて述べています。
近年の民法改正についても言及しています。
※このレポートは以下のレポートに収録されているものと同じ内容です。
慶応義塾大学法学部(通信)合格レポート集
http://www.happycampus.co.jp/docs/938478183489@hc15/122970/
■債権総論
はじめに
本レポートでは「債務不履行における帰責事由」と「履行補助者の過失」の法的論点について論じる。そしてこれらの問題を扱うに際し、まずその伝統的理論を概観し、これに対する近時の学説を概観する。そして最終的に、この近時の学説が、目下行われている債権法改正においてどのように扱われているかを確認することを目的とした。
第一部 債務不履行と帰責事由
1.債務不履行における帰責事由
いわゆる債務不履行による損害賠償責任(以下「債務不履行責任」とする)を負うのに必要な要件とは、次の三件とされてきた。すなわち、事実としての「不履行」、「違法性」、そして、主観的要件としての「債務者の責めに帰すべき事由」(以下「帰責事由」とする)である。
とりわけこの三つめの「帰責事由」については、法学者の間で様々な議論が行われており、新たな理論が構築され、そして債権法改正においても反映されつつある。この議論の変遷について以下にみていく。
2.伝統的理論~過失責任主義
債務不履行責任において、なぜ帰責事由を要件としてきたのか。伝統的理論ではこの帰責事由を、ドイツ民法理論を継受した「過失責任の原...