わが国では、急激な高齢化が進み、介護が必要な人とその家族を社会全体で支える仕組みとして介護保険制度が制定された。しかしそれに伴い、高齢者を取り巻く環境が注目されると、今まで見えてこなかった高齢者に対する様々な課題が、取り上げられるようになってきた。
厚生労働省がHPで公表している高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査結果(平成26年度)によると、高齢者虐待と認められた件数は、養介護施設従業者等によるものが300件あり、養護者によるものは15739件であった。養介護施設従業者による虐待の発生要因は「教育・知識・介護技術等に関する問題」が最も多く、次いで「職員のストレスや感情コントロールの問題」「虐待を行った職員の性格や資質の問題」であった。養護者による虐待の発生要因は「虐待者の介護疲れ・介護ストレス」が最も多く、次いで「虐待者の障害・疾病」「家庭における経済的困窮(経済的問題)」であった。虐待の種別としては、どちらも身体的虐待が最も多く、次に心理的虐待が多く見られる。さらに、虐待を受けた高齢者の多くは認知症があり、身体的虐待を受ける割合が高いことや、要介護度が重い場合に虐待の...