ジョン・ロックの市民政府論における社会契約論について論述してください。
市民政府論は1689年、イギリスの思想家ジョン・ロック(1632~1704)によって発表された政治哲学書である。ロックは、ホッブズに次いで社会契約論を説いた人物である。その政治論はホッブズの思想に強い影響を受けながらも、より民主主義的な側面が現れたものとなっている。ホッブズは人間の本性を「自己保存の欲求」であると考えていた。自然状態では相互不信から来る戦争状態に陥り、自己保存の欲求と矛盾する生命の危機に脅かされる世界となる。これを防ぐために、国家へ「自然権」を相互譲渡するという社会契約をし、人による支配(絶対王政)から法による支配(立憲主義)への転換を説いた。ただしホッブズの社会契約論には、正義の判定基準である法や、執行権力に「権威の絶対性」を付与するという主張があり、これにより、主権者の独裁となる危険を孕むという問題点があった。そしてこのホッブズの社会契約論に異議を唱えたのがロックである。ロックによると「自然状態」とは、ホッブズの言うような「戦争状態」ではなく「自然法の範囲内で完全に自由な状態」とした。自由とい...