佛教大学通信教育課程、英米文学科、異文化理解(西欧)のレポートです。この長さにも拘わらず判定はAで、所見は以下の通りです。
「論文調のレポートとなっているが、「幸福」という設題中の用語を「不幸」という反対概念とうまく関連させて設題に応答しようとしている。E・トッドの地政学的方法論もうまく導入して記述している。大変興味深く読んだが、まさに「紙幅のジレンマ」があったのは残念ではあった」
EU統合はそこに暮らす人々、ひいては世界の人々の幸福にどのような貢献を果たすと考えられるか。またそれがもつジレンマとは何か。もっとも基本的な目的と具体的な発現状況を要約して述べよ。
●はじめに
レポートでEU統合の目的とその具体的な発現状況を論じるというのは、紙幅を考えればかなり野心的である。EU各国を個々に論じる事なく、東欧、南欧、西欧、北欧に大別して論じたとしても、相当の長さになるだろう。二万字に収まる事すら、まずないのではないか。そのため今回は、イギリスやフランスのような西欧のEU先進国を主な題材とする。これは、『異文化理解(西欧)』という題に沿うためのものでもある。だが、それでもレポートが相当の長さになるのは不可避であろう。
さて、EU統合の目的は何であろうか。それは色々な説明が可能であろうが、本質的には「欧州諸人民の幸福の維持と増進」に他ならないと言えるだろう。戦争を起こさないため、とか、経済発展のため、など色々に言えるが、結局それは、欧州に住む人民の幸福のためである筈だ。その「幸福」が、平和とか、経済発展とか、人権擁護とか、様々な形で表出しているに過ぎない。そういう「欧...