高齢者虐待における法的諸問題について、約2500字で論じています
高齢者虐待における法的諸問題
平成17年に高齢者虐待防止法が成立し、平成18年4月から同法が施行された。高齢者虐待における法整備は同法によって前進したが、高齢者虐待における法的な問題はどこにあるのだろうか。本レポートでは高齢者虐待を、大きく刑事責任と民事責任とに分けて、実例を交え考察する。
高齢者虐待法施行の意義は、何といっても高齢者虐待行為がどのようなものなのか、その意義を類型化して規定したところにある。この分類によってそれぞれの虐待行為に関する法的責任が明確になる。
高齢者虐待行為は、その主体、客体、態様によって法的責任も異なる。
まず、刑事責任が問われうるものとして、養護者による65歳以上の者への次のような態様の行為がある。第一に、身体的虐待であり、これは同法2条4項1号イによって、「高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。」と規定されている。第二に、介護・世話の放棄・放任であり、同号ロにおいて、「高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、養護者以外の同居人による身体的虐待、心理的虐待、性的虐待と同様の行為の放置等養護を著しく怠る...