テーマ:「子どもと本の多様性」「赤毛のアンから読み解く教育のあり方」
レポートテーマ
「子どもと本の多様性」「赤毛のアンから読み解く教育のあり方」
• はじめに
今期取り扱った英米の児童文学の作品の中には主人公、ならびに登場する子どもたちが大人顔負けの機転を利かせる場面で、読者を驚かせるしかけがある。それはどれも多くの大人にとって子どもたちの価値を新たに認識させたに違いない。マーク・トウェインの「トム・ソーヤーの冒険」では主人公トムが若手実業家ばりの発想力を駆使し、次々と富(おもちゃ・名声)を得ていく様子は読者を楽しませ、同時に社会は広く子どもの可能性を発見するこことなった。またモンゴメリ作の「赤毛のアン」は主人公アンの圧倒的な想像力と多彩な表現力が女性中心に受け入れられ、男性主人公中心の文学に変化を与えた。ふたつの作品には相通ずるものがある。それはトムもアンもお金もちのおぼっちゃまでもなく、またガリガリ勉強するエリートのような「大人にとって都合のいい子ども」ではないということである。もちろん多くの読者に共感を得るうえで、ごく普通の少年少女を描くことは定石であるように思われる。しかしむしろトムは初等教育を受けているものの、性格上きちんと勉強するタイプ...