(2018)慶應通信総合科目「文学」で合格をいただいたレポートです。選択した英米文学の一作品における家族の問題がテーマです。
※レポート作成の参考としてご利用ください。合格を約束するものではありませんので、丸写しはご遠慮願います。
'18文学 問5
選択作品:キャサリン・マンスフィールド『大佐の娘たち』
安藤一郎 訳『マンスフィールド短編集』 新潮文庫,1957年(初出1921年)
タイトル:「絶大な父親の影」
はじめに
本稿では,20世紀に活躍したキャサリン・マンスフィールドの『大佐の娘たち』(原題 "The Daughters of the Late Colonel" )を取り上げ,この作品における「家族の問題」を論じる。厳格な父権制家庭に育った二人の姉妹が,父亡き後,故人に対して湧き上がる情念や事実にどう立ち居振る舞えばいいのか戸惑い,威圧から開放されることなく父親の影に怯え,途方に暮れる様子が描かれている作品である。
家父長制文化の時代と両親の存在
初出は1921年であり,当時のイギリスにおける中産階級の文化であった家父長制の考え方が作品に反映されている。18世紀後半にもたらされた産業革命により,ヴィクトリア朝は経済成長を遂げる。それによって,女性は社会的生産活動の場から排除され,主婦は経済的機能からも夫からも孤立した。青木は,階級制度だけでなく性差までも根深く存在したヴィクトリア朝イギリスのフェ...