(2019)慶應通信経済学部専門科目「保険学」で合格をいただいたレポートです。巨大リスクに対する保険と官民の役割分担との関係がテーマです。
※レポート作成の参考としてご利用ください。合格を約束するものではありませんので、丸写しはご遠慮願います。
'19保険学
はじめに
2019年9月5日,「令和元年台風第15号」が発生した。関東地方に大きな被害をもたらし,特に千葉県内は大規模な停電に見舞われ,発生から3週間を経過してもなお,山間部など,送電が復旧していない地域があった(「日本経済新聞」2019年9月24日)。これだけでなく,日本各地では自然災害が毎年のように発生し,多くの人命や財産が失われており,その損害の数は増加傾向にある。こうした巨大災害は,国民経済にも甚大な損害を及ぼし,いまや国家的な関心事の一つとなっている。本稿では,このような激甚災害,すなわち巨大リスクに対する保険の機能と,官民の役割分担のあり方について論じる。
1)リスクという言葉の意味
「リスク」というそもそもの言葉の意味を理解しておきたい。あらゆる場面で登場するこの言葉は,主に,損をしてしまう可能性に対して用いられている。柳瀬は「リスクという言葉は文脈によって複数の意味(期待値周りの変動性,損失の期待値)をもつ」と解説している(『はじめて学ぶリスクと保険』p11)。また,近見は「リスクを感じるのは,期待値および分散の値がどうであれ,事故または出来事の発生...