はじめに
近代市民法とその修正について述べる。近代市民法とは、フランス民法典及びこれを範として制定された諸国の民法典であり、法実証主義が賛美する実定法体系である。まず、近代市民法が形成されるまでの歴史を説明していくことにする。
近代市民法が形成される歴史
(1)ローマ法
道徳・法・宗教の3つが分離したのは、おそらく、ローマ法においてである。とりわけ1~3世紀にローマ帝国で成立した法は、古典期ローマ法と呼ばれ、近代市民法の基礎になった。古典期ローマ法の特徴には、宗教的な理由付けをしない、高度に発達した自由経済を前提にしている、制定法を基礎にしながら、法学者と裁判実務家がこれを拡張したという点がある。
(2)キリスト教社会とその崩壊
その後、ローマ法を発達させたローマ帝国は衰退し、キリスト教が法の役割を担うようになる。道徳・法・宗教が、ふたたび一体になり、多くの不道徳な事柄が、法によっても禁じられた。例として、利息の禁止や自殺の禁止が挙げられる。
ヨーロッパが中世から離脱して近代を形成する大きな原動力となったものとして3つのRであると言われている。1つ目はルネッサンス(ren...