中国文学史
本レポートでは、課題番号1について論じていく。
まず、魏晋南北朝時代における漢詩の展開を一言で言い表すとするなら、「五言詩の急速な一級文学化」である。漢代までの中国文学は、散文であるが詩のように韻を踏んでいく「辞賦」というスタイルの文学が中心であり、詩は前漢の武帝の頃に民間から興ったとされているものの、いわば「亜流」に過ぎないものであった。しかしながら後漢末期以降、いわゆる三国志の時代に中原において権力を握り、のちの魏王朝の礎を築いた曹操やその息子で魏の初代皇帝である曹丕、その弟の曹植らの曹一族は文学に強い関心を持っており、特に詩をよくした。当時において主流の文学であった辞賦は宮廷文学の性格を多分に持つ「お堅い」ものであり、制約が多かったのに対し、民間の歌謡に起源をもつとされる五言詩であればより情感豊かな表現が可能であったゆえに、新たな王朝の誕生を迎えようとしている時代の気風を掴んだのである。このようにして中国文学というフィールドにおいて公然たる支持基盤を確保した漢詩は、その後の晋、南北朝時代を通して発展を続け、ついには辞賦を凌駕し、大唐帝国における漢詩の百花繚乱の...