漢文学Ⅱ
孔子にとって学問とはなんであったか。まずこんな言葉がある。「子の曰わく、我れは生まれながらにしてこれを知る者に非ず。古を好み、敏にして以てこれを求めたる者なり」(私は生まれつき物事をわきまえた者ではなく、昔のことを愛好して一生懸命に探究している者だ) 。またこうも言っている。「子の曰わく、述べて作らず、信じて古を好む。窃に我が老彭に比す」(古いことに基づいて述べて創作はせず、昔のことを信じて愛好する。そうした自分をこっそりわが老彭の態度に比べている)。即ち、孔子にとって学問とは、古の時代における物事を信じて愛好する、学んでいくというものであった。しかしながら、ただ単に昔のことを掘り起こそうとするだけのものではない。昔時を理想とし、それをそのまま現代に復活させようとすることは、新の王莽の如く社会に無用な混乱を招きかねない。孔子の態度はそのような単純なものではない。そのことは、彼の次の言葉からも明らかである。「子の曰わく、故きを温めて新しきを知る、以て師と為るべし」(古いことに習熟してさらに新しいことをわきまえていくなら、人の師となれる)即ち現代の新しき物事にも精通している必...