漢文学Ⅰ
問1
最初に李白について述べたい。彼の詩でまず目立つ特徴は、酒を題材としている作品が多いということである。船上で酒に酔い、水面に映った月を取ろうとして溺死したという伝説もあるほどで、彼がこよなく酒を愛しているということは、その作品から余す所なく伝わってくる。
まず見たいのは「将進酒」という作品で、その特徴を一言で言えば「酒の賛歌」である。人生は楽しめるうちに楽しんでおけばよい、という陶淵明「雑詩」にも通じる心持ちから始まり、酒は三百杯は飲めとか、金が足りなくなったら例えどんな名馬や珍品でも金に換えて酒を買おうなどといった、ひたすら酒を飲むことを詠っている。だが、ただ酒を飲んで終わるのではない。最後の句を見るとこうある。「爾と同に銷さん万古の愁いを。」君たちと共に痛飲して、万古の憂愁をきれいに消そうというのである。ここに李白が酒を飲み、また詠う理由の一つが見える。酒を飲んで酔うといい気分になれる。酒浸りと言っては言葉が悪いが、要するに酒を飲んで嫌なことを忘れようというものである。こういう所は今も昔も同じなのかもしれないが、一つ違うのは、李白はただの酒飲みではないという...