熱力学
熱力学(ねつりきがく、英:
thermodynamics)は、物理学の一分野で、熱や物質の輸送現象やそれに伴う力学的な仕事につい
てを、系の巨視的性質から扱う学問。アボガドロ定数個程度の分子から成る物質の巨視的な性質を
巨視的な物理量(エネルギー、温度、エントロピー、圧力、体積、物質量または分子数、化学ポテ
ンシャルなど)を用いて記述する。
熱力学には大きく分けて「平衡系の熱力学」と「非平衡系の熱力学」がある。「非平衡系の熱力学
」はまだ、限られた状況でしか成り立たないような理論しかできていないので、単に「熱力学」と
言えば、普通は「平衡系の熱力学」のことを指す。両者を区別する場合、平衡系の熱力学を平衡熱
力学 (equilibrium thermodynamics)、非平衡系の熱力学を非平衡熱力学 (non-equilibrium
thermodynamics) と呼ぶ。
ここでいう平衡 (equilibrium)
とは熱力学的平衡、つまり熱平衡、力学的平衡、化学平衡の三者を意味し、系の熱力学的(巨視的)
状態量が変化しない状態を意味する。
平衡熱力学は(すなわち通常の熱力学は)、系の平衡状態とそれぞれの平衡状態を結ぶ過程とによ
って特徴付ける。平衡熱力学において扱う過程は、その始状態と終状態が平衡状態であるというこ
とを除いて、系の状態に制限を与えない。
熱力学と関係の深い物理学の分野として統計力学がある。統計力学は熱力学を古典力学や量子力学
の立場から説明する試みであり、熱力学と統計力学は体系としては独立している。しかしながら、
系の平衡状態を統計力学的に記述し、系の状態の遷移については熱力学によって記述するといった
ように、一つの現象や定理に対して両者の結果を援用している。しかしながら、アルベルト・アイ
ンシュタインはこの手法を否定している。
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