佛教大学2021年シラバス対応、仏教文学概論の第1設題です。空海の「三教指帰」について、亀毛先生、虚亡隠士、仮名乞児の三人の主張について分かり易くまとめてあります。
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第 1 設題
空海の「三教指帰(さんごうしいき)」について述べよ
はじめに
『三教指帰』は、日本人による最初の漢文であろうといわれ、その戯曲的な構成から、
日本で最初の小説であるともいわれている。そこで、本リポートは、『空海「三教指帰」』
加藤純隆・加藤精一=訳(平成十九年)を参考にして、亀毛先生の主張、虚亡隠士、仮名
乞児の主張、即ち、「儒、道、仏」の三教を比較し、仏教の優れた点を考察する。
1 亀毛先生の主張
亀毛先生は、儒教からみた人間の生き方について述べていく。それによると、人の心は
自然に快楽へ走り、善を望む人は極めて少なく、反対に、悪にふけり暮らす者は非常に多
い。その為、人は一度好きな方向に進み、その環境に一旦慣れると、なかなか好きではな
い方向には向かない。つまり、一度身についた習慣を改めることは難しい。
『礼記』を引き合いに出し、父母が病気の時は、親を思う気持ちを強くする。また、他
人の憂いを共に憂い、区別しない。他人や親戚にも礼儀をわきまえることが大事であると
説き、それができていないと蛭牙公子を叱責する。悪い心を入れ替えるためは、その道に
精通し...