佛教大学通信2020年度日本文学概論第2設題の受理リポートです。芥川龍之介の「鼻」と出典の「今昔物語」を比較して4つの段落に分けて書きました。担当教員からは、設題がきちんとつけられ、論文らしい型となっています。論の構成・考察ともに大変よくできていますと所見を頂いています。リポート作成時の参考にして下さい。
第2設題
芥川龍之介の『鼻』を読み、出典と比較して論ぜよ。
1作品の背景とあらすじ
『鼻』は一九一六(大正五)年に、第四次『新思潮』の創刊号に掲載され、『羅生門』や『芋粥』と共に、芥川龍之介の王朝物と呼ばれる平安時代を舞台にした作品である。人間の自尊心・虚栄心を描いた佳作として、夏目漱石が絶賛し、芥川龍之介の名前をあげるきっかけとなった。芥川龍之介は、王朝物の作品の多くを『今昔物語集』を典拠としている。『鼻』の題材は、『今昔物語集』巻二十八の「池尾禅珎内供鼻語第二十」、『宇治拾遺物語』巻第二(七)「鼻長き僧の事」、ゴーゴリの「鼻」などがあるが、本レポートでは、『今昔物語集』との比較をし、その違いや相違点を考察する。
『日本文学概論』坂井健編著2010年佛教大学160:161による『鼻』のあらすじをまとめると、次のようにある。
禅智内供という偉い坊さんは、人並みはずれた長い鼻を持っており、
人知れず悩んでいたが、悩んでいることを人に知られたくないと思
っていた。しかし、食事の時には、弟子に鼻を支えていてもらわな
いと、鼻がお椀の中に落ちたりして、困っていた。ある時...